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順送プレスとは?基本的な概要からメリット・デメリットについて専門メーカーが解説


  1. 技術コラム
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  3. 順送プレスとは?基本的な概要からメリット・デメリットについて専門メーカーが解説

順送プレスは、比較的シンプルな形状の金属部品の大量生産においては非常に効率的な加工技術の一つで、高い生産性と精度を両立した生産が行えます。また、材料の供給及び成形品の排出を自動化する技術の開発も進んでおり、全自動で生産を行わせることで、更なる生産性の向上と人的コストの削減を見込むことができます。この通り、メリットが非常に大きく魅力的な順送プレスですが、その仕組みや逆に課題となる点など、深く理解できていないという方も多いと思います。今回の記事では、順送プレスの金型設計や製品の量産対応を得意とする弊社が、順送プレスの仕組みや課題点について、製品事例を併せて詳しく解説します。

順送プレスの概要

弊社制作の順送プレス金型
弊社製作の順送プレス金型

順送プレスとは、金属部品製造の一連の工程を連続的に行うことができる金属加工技術です。板状の金属材料(コイル材)をプレス機に連続的に通し続け、専用に設計された金型を用いることで、プレスされる度に複数の加工が行われます。上の写真の中央に映っているのが実際に順送プレス金型を用いて加工されたコイル材で、写真上では下側から、穴あけに始まり、外形抜き・曲げ・成形・トリミングなど様々な工程がなされてゆき、上側に進むにつれ製品に近づいている様子が見て取れます。また、コイル材の中腹から下側に向かっては、丸い穴が等間隔に並んでいますが、これがプレスが繰り返される毎にコイル材が送られるピッチ距離となります。加工の様子については動画で見て頂く方がわかりやすいため、下記の動画もぜひご覧ください。

順送プレスの加工の様子


この順送プレスの登場により、プレス加工において高精度で安定した品質で、多少複雑な形状の金属部品の大量生産が可能となりました。次に、順送プレス技術が開発された経緯については、他のプレス加工技術の説明も欠かせないため、次節で他のプレス加工技術に関しても簡単に説明します。

プレス加工の種類と順送プレスとの違い

プレス機械の基本解説(引用:アイアール技術研究所様, “初心者必見!プレス機と金型の基本(金型の構造、プレス加工方式による相違)“)
  • 比較的単純な加工ではあるため、手動プレスの応用が効くなど操作性に優れる
  • 機械の導入コストが低い
  • 単純形状の製品の加工であれば、金型を入れ替えるだけで生産する製品を変えられるなど、柔軟性に富み、小ロット生産や多品種少量生産に適している
  • 複雑な形状の製品を生産する際には、設備の並列化や金型の変更が伴うため、生産性が低い
トランスファー型の加工イメージ(引用:株式会社吉井金型製作所様, “事業内容“)
  • 材料を金型間で移動させるための専用の装置を要するが、複数の工程を一台のマシンで行うことが可能
  • それぞれの金型での工程が独立しているため、精度面では順送プレスより優れる場合がある。
  • サイズの小さい製品を加工する場合は、材料を移動させることが難しい。生産スピードは順送プレスよりは低くなる場合が多い
  • 量産に向けた加工方法であり、柔軟性は低い

プレス加工の種類は大別すると、単発プレス・トランスファープレス・順送プレスに分けられます。
単発プレスはその名の通り、1度のプレスで1つの工程を行うプレス加工のことで、最もポピュラーなプレス加工です。
トランスファープレスは、順送プレスと同様に1台のマシンで複数の工程を行えるプレス加工技術です。考え方としては、単発プレスを複数並べるという考え方で、材料の金型間の移動は専用の装置を用いて、材料自体を移動させてプレス加工を行います。

プレス加工に総じて言える特長は、シンプルな形状のものであれば短時間で大量に作れることにあります。裏返すと、プレス加工は複雑な形状の製品を作ることには弱く、どのように実現するのかが課題点です。

そこで、考えられたのがプレス工程を複数に分けて行う方法です。単発プレスでもマシンを複数台利用可能な場合や、金型を交換することで実現は可能ですが、段取りの工数を要するため生産性は低いです。
より効率的な方法が、トランスファープレス・順送プレスとなります。トランスファープレスも十分に効率的な手法と言えますが、材料の移動を伴うためサイズが小さい製品を作る際は搬送が難しくなってしまう点や、移動に時間がかかるため、高速生産においては、順送プレスのほうが有利と言えます。一方、順送プレスでは、コイル状の長い板材を連続的に送ることで加工を行いますが、トランスファープレスでは材料と工程が、それぞれの金型部で独立しているため、精度面では順送プレスよりも優れる場合があります。

ここまでの説明で、順送プレスのメリットについても言及していますが、上述した他のプレス加工方法の特徴を踏まえた上で、次節で順送プレスのメリットについて詳細に説明します。

順送プレスのメリットと用途

弊社での順送プレスの加工の様子

順送プレスのメリットは以下のものが挙げられます。

  1. 効率的な生産:順送プレスでは、コイル状の長い金属の板材を連続的に通しながら加工を行うため、工程間の移動による時間のロスを大幅に削減でき、高速で効率的な生産が可能です。したがって、大量生産を行う場合に真価を発揮します。上の動画はテスト加工の動画になり、比較的速く動かしておりますが、本番利用の際には、製品によりますが分間300~500程度のショット・製品の排出が行われる場合もあります。
  2. 高い精度で均一な品質の製造が可能:順送プレスでは、精密な加工を均一な品質を保ったまま行うことができ、精密部品の製造にも適しています。緻密な設計と精密な機械加工によって品質を保持し、デザインレビューやテスト加工時のフィードバックで改良を重ねることで、お客様のニーズに応える高精度・高品質を実現することが可能になります。
  3. サイズの小さい精密部品の量産も可能:順送プレスはコイル材を利用して加工を行うため、トランスファープレスと比較して、サイズの小さい部品の量産も容易に行えます。また、精緻な金型の設計と製造を行うことで、精密部品の量産も可能です。
  4. コスト削減:順送プレスでは既に自動化の技術が確立されており、長期間にわたり高い生産性を維持することが可能です。したがって、人的コストを削減できるため、製品の価格競争において優位性を保ちます。

上記のように、順送プレスは産業における優位性が高い特徴を豊富に持っているため、様々な産業分野において利用されています。主な適用分野を説明します。

  • 自動車業界:エンジン部品やボディ部品、導電部品など、高精度が求められる部品の製造に使用されています。順送プレスの効率性により短時間で大量の部品を生産することが可能であることや、自動加工によるコスト削減が見込めることから、生産コスト削減のニーズが高い自動車業界において高い優位性を保ち、また、高精度な加工により自動車の品質の向上にも役立っています。
  • 電子機器業界:順送プレスは、スマートフォンやコンピュータの内部部品など、小型で高精度な部品の製造に適しています。これにより、製品の品質と信頼性が向上します。電子機器の製造には、細かい精度が求められるため、順送プレスの高い加工精度は不可欠です。また、高い生産性と省コスト性から、最終製品の価格競争においても貢献します。
  • 医療機器業界:順送プレスは医療機器の製造にも利用されます。医療機器には非常に高い精度と品質が求められるほか、小型で緻密な形状の部品も存在し、順送プレスの強みを活かせます。
  • 家電業界:冷蔵庫や洗濯機の部品など、大量生産が求められる製品の製造に利用されています。順送プレス技術により、コスト削減と生産性の向上が実現できるほか、家電製品の生産においては、耐久性と信頼性も重要であり、順送プレス加工による高品質な製品はその要求を満たします。

順送プレスの課題/デメリット

一方で、順送プレスを利用する際の課題やデメリットも存在します。以下に具体例を挙げてみます。

  • 初期投資費用が高い:弊社もイチ中小企業となりますが、順送プレスに対応するプレス機械の価格やコイル材の供給装置等ユーティリティ設備、金型自体の価格などなど…順送プレスを行うにあたって高い初期費用を要することは大きな障壁であると言えます。しかし、順送プレスの導入により大幅な生産効率の向上とコスト削減が見込まれるため、長期的な視点では投資回収が可能な場合が多いです。また、リースや国の補助金制度の活用等により、負担を軽減する方法もあります。したがって、順送プレスの利用を考える場合には、慎重に、事業と資金調達の計画を立てることが重要です。
  • 複雑な金型設計・製作のノウハウを要する:メリットでも触れていますが、高い量産性・高精度で順送プレス加工を行うためには、高精度かつ高耐久の金型の設計と製作が必要となり、これには深い専門知識と高い技術力が必要です。金型の設計ミスや製作時の不具合等は、場合によっては生産ライン全体に影響を及ぼし、最終製品の品質問題や生産停止といった大問題に発展しかねません。したがって、これを防ぐためにはCAD/CAMシステム・シミュレーション技術の活用や、金型の設計・製作時のトライアル試験の実施、精密加工を行える生産設備の充実をはかることが重要です。

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弊社の順送プレス金型及び製品の製作事例

圧着端子製造用順送プレス金型

こちらは民生用の圧着端子製造用のプレス金型となります。弊社にて金型の設計・製作を行い、製品の量産まで一貫で対応しました。
spm(分間のショット数) 300[spm]にて生産が行われ、精度も求められる製品となるため、弊社にてテスト加工と改良を複数回にわたって実施した上で、お客様立ち合いのもと試験を行い、品質に合意が得られた上で納品しました。

金型サイズ[mm]300(縦)×600(横)×190(高さ)
製品サイズ[mm](参考)28.5mm×17mm×8.1mm(キャリア込み)
24.2mm×5.6mm×8.1mm (キャリア含まず)
金型材質SKD11、SKS3、超硬、他
製品材質MAX251C-1/2H
製品の板厚0.5mm
製品ピッチ17mm
spm(分間ショット数)300
納期約2ヶ月
業界・用途自動車やエアコン等

まとめ

順送プレスは、生産性の高さと高精度加工が可能であることから、あらゆる産業の発展に貢献する画期的な技術です。現在でも、自動検査機器や材料の供給や排出された製品を回収するロボットの開発、高度なシミュレーション技術など最新技術が開発・導入が進められており、さらなる生産効率の品質の向上が見込まれます。今後も技術の進化と共に、より高度な自動化やスマート工場化が進むことで、さらに多様なニーズに応えることができるでしょう。

順送プレス金型.comを運営する弊社、株式会社三國工業所は創業以来、順送プレス専門メーカーとして金型の設計から、設計した金型を用いた量産対応まで、完全内製化にて豊富な実績を有しており、材料特性や高速量産に向けた高品質な金型設計を実現する高度な技術力を有することを強みとしております。
「金型の設計・製作のみ(売り型)」と「量産対応(金型設計製作含む・金型支給の両者対応可能)」、「短納期対応」や「公差が厳しい・難形状の製品の金型の設計」など、お客様の幅広いニーズに応えるサービスを提供しておりますので、もし、順送プレスでの製造や金型の設計・製作にてお困りごとがございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。


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