前回の技術コラムにて、順送プレス金型と高速プレス機による効率的な量産!~不良流出ゼロを目指す弊社の取り組みと、「巻き直し検査機」のご紹介~ ということで、プレス加工の生産現場で工夫している事例と、その設備についての記事を記載いたしましたが、全数の画像検査を行っている点、特に「巻き直し検査機」での取り組みに対しお客様からの反響を多くいただき、安全に、より良い製品を提供するための重要な工程であることを再認識いたしました。
今回の記事では、そのプレス加工の生産に必要不可欠な巻き取り装置について、上記の「巻き直し検査機」を製作していただいております、オー・ケイ・ワイシステム株式会社様製の巻き取り装置「ORAH12」をご紹介いたします。
自動巻取機1条2リール「ORAH12」の機能とそのメリット
自動巻取機1条2リール「ORAH12」には、以下のような機能が備わっています。
- コンパクトかつリールが上下する『2連巻き取り』
- 通常の3倍!豊富な『センサー数』
- 現場思いの使いやすい『インターフェース』
どのように優れているのか、写真や動画とともにこの巻取機の魅力・メリットをご説明していきます。
リールが上下する2連巻き取り
リールを上下のテーブルに2つセッティングし、自動切り替えによって2連続の巻き取りが可能になるため、巻き上がりごとにリール交換を人力で行うシングルの巻取機と比較すると、生産効率が大幅に向上するとともに、無人運転による省人化に貢献します。
通常の2連巻取機は、リールが切り替わる際に供給ライン側の高さが変わり、新しいリールに製品を巻き取る方法が主流なのですが、この方法ですとスピードが早いラインに使用する際に、切り替えのタイミングでリールへ巻き込む速度よりも製品の供給が早すぎて巻き込みに失敗する場合があります。
この巻取機は小さな筐体で非常にコンパクトでありながらリール側が上下する仕組みになっており、製品がリールへ供給される高さを変えることなくリールを切り替えることができるため、送りの早いラインにも対応が可能です。
メリット
- 生産効率が大幅向上
- 無人運転による省人化
- 送りの早いラインにも対応
豊富なセンサー数
自動巻取機による生産はメリットが多く、上記のとおり効率向上に大きく貢献しますが、自動ゆえの意図しない巻き不良や、製品が変形していたり、装置から製品が外れてカウントがずれたことによる員数過多など・・・様々な見落としも気をつけなければなりません。
「ORAH12」では、そういった危険を見逃さない数々の工夫を凝らしており、例えば、インラインの画像検査装置による製品の全数検査はもちろん、製品が画像検査を通る際のセンサーが通常の3倍(!!!)設置してあることで、1つ目で検査のための画像カウント、2つ目で製品を数えるカウントを別に実施することで員数ズレの確認、3つ目で製品が大きく外れた際のワーク外れの防止ができます。
また、リールをセットするテーブルはテーブル自体がタッチセンサーで、製品がうまく巻き込まれずリールの外へ飛び出してしまった場合に製品がテーブルに触れることで即停止できるようになっていたり、リール切り替えのタイミングでリールが上下する際に、人や異物の巻き込み事故がないように稼働部位にセンサーが装備されているなど、様々な角度から安全を第一に考えられた作りになっております。
メリット
- 画像検査センサーが通常の3倍なので員数ズレを削減
- 豊富なセンサー数でワーク外れ防止
- テーブルのタッチセンサーによる自動停止
- 巻き込み事故防止の稼働部センサー装備
現場想いのインターフェース
たいへん多くの機能を搭載した「ORAH12」ですが、その機能が集約された操作パネルの扱いやすさは格別なもので、「どのボタンからどの項目を押すとどうなるか」が視覚的にも感覚的にも理解しやすく、「瞬時に行いたい作業にアクセスできる」と、現場作業者に非常に喜ばれています。
ひとつひとつが生産の現場に寄り添った有用な機能ばかりであり、ここに一部をご紹介いたします。
- 巻き取りを安定するための機能
先程のセンサーだけではなく、機能面からも巻き不良撲滅へのアプローチが行えます。
リールに開いた窓の位置を必ず避けた状態で製品が巻き込めるように設定できる「リール定位置モード」
巻き取り中の径の変化に合わせ、巻き状態を安定させるために巻き取り後半の速度を任意のスピードに減速できる「減速設定」など、巻き始めから巻き終わりまでのコントロールが容易に設定が行えます。
- 各製品ごとに設定ができ、保存機能で瞬時に呼び出しも可能
上記の設定のみならず、下記のような項目も調節が可能です。
- 製品ごとに巻き取る物の大きさ
- リールの幅
- ピン数
- 送り幅
- 巻取速度
など・・・考えられる設定項目はほぼ全て調節が可能で、製品に合わせた巻き取りを行うことが可能です。
さらにこの巻取機は、設定した項目を保存することができます!
最大で20種類の製品が登録可能ですので、プレス機に載せる製品の段取り替えに合わせて再度細かな内容を設定する必要はなく、登録している製品を呼び出せば、設定した緻密な条件のもと、即座に生産が行えるようになっております。
- エラーの内容がすぐ分かり、解決までを素早くアシスト
稼働時に異常が発生した際にはエラーの内容が操作パネルに表示されます。
淡々と「○○エラー」のみが表示されるのではなく、エラー解決のために行うべき処置まで書かれているため、説明書の「困ったときは」のページを探し出すこと無く、復旧までの手ほどきが非常に分かりやすくなっております。
また、エラーに限らず巻き取りの切り替えや停止したタイミングは日付・時刻とともに履歴となって記録され、いつでも呼び出せるようになっており、「どのタイミングで、何によって停止したか」のトレーサビリティまで完備しております。
このほか、アラートの発生設定やサンプル処理など、この巻取機にはまだまだ便利な機能が目白押しですので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
「ORAH12」だけの特別な機能も
この巻取機の製作にあたって、各社からプレス作業現場の「こんなことができたらいいな」というお声を集め、取り入れた機能も数多くあるといいます。
こうしたこだわりの安全機能は、日々行われる生産現場での繰り返しの作業・仕事の中のふとした瞬間の「気付き」が集まり、この巻取機にフィードバックされ、形になって現場に返ってきているのです。
そしてこの巻取機のもう一つのテーマに、「癒やし」があります。では次にこの「癒やし」の機能をご紹介します。
人感センサーとアラートで周囲にお知らせ機能
なんとこの巻取機・・・喋るんです!
この巻取機の最大の特徴でもあります、音声で作業者に話しかけてくれる機能をご紹介いたします。
搭載された人感センサーにより、作業者が近づくと挨拶や稼働状況を声で伝え、まるで現場に仲間がいるような安心感を提供してくれます。
以下は、実際の音声の例です。
『おはようございます。ちょっと画像不良が多いみたいですね。』
『こんにちは。完了リール、ありますよ。』
『こんばんは。カウントリセットされていませんけど大丈夫ですか?』
サンプルボイスもご用意いたしましたので、ぜひお聞きください。
このように、時刻や機器の状態に応じて適切なメッセージを発するため、作業者は手軽に状況を把握することができ、日常作業に自然と溶け込みます。
例えば最後のカウントリセットのお知らせは、「画面パネルに表示された数値を確認せずに継続して生産を行ってしまい、員数不足の不良を起こす」ことの防止につながるなど、機械側からのアプローチによる不良防止にもつながっております。
プレス作業現場は機械音が大きく、通常の声がかき消されることが多いですが、
「ORAH12」には大型スピーカーが備わっており、音量調整も可能で、必要な情報が確実に届く工夫が施されています。
日々繰り返される作業の中で、機械から通常の警告音やアラートとは異なり、言葉をかけてくれることで作業者の負担を和らげ、ホッとする瞬間をもたらします。
まとめ ~「ORAH12」のご紹介~
自動巻取機1条2リール「ORAH12」のご紹介を行ってまいりましたが、その魅力が伝わりましたでしょうか。
作業効率、安全性、使いやすさ、そして「癒やし」の要素を兼ね備えた巻取機。
現場のニーズに応え、作業者にとって親しみやすく、信頼できるパートナーとして、弊社の作業現場でも大活躍中です。
稼働している様子をご覧になりたい方にも工場見学を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。